すごいぞ 関東平野

関東平野の興味深い地形を、webGISとOSINTで解説します This blog explores Japan’s regions, landscapes, infrastructure, history, culture, and policy through field observations and document‑based analysis. It shows how local realities connect to national trends.

東電シールドマシンが相模原市内で起こした流域下水道幹線の破損事故、深掘りしてみた

9月10日現在で、市民生活に影響はなさそうです(AIイラストだよ)

 掘進中のシールドマシンが、既存の下水管に接触し破損させるという事故が発生しました。

 事故現場は神奈川県相模原市中央区上溝2560番地付近、県道46号相模原茅ヶ崎線の地下約12メートルです。

 また、破損した下水管は「相模川流域下水道左岸幹線」です。

事故現場(神奈川県記者発表資料「流域下水道の下水管接触事故に伴う緊急調査の結果について」)

 2025年8月29日、東京電力パワーグリッド発注の管路設置工事(施工:奥村組)で掘進中のシールドマシンが流域下水道幹線に接触し損傷させた可能性について、下水道管理者である神奈川県に報告がありました。

 9月2日、報告を受けた神奈川県が下水管内にテレビカメラを投入したところ、幅約1m、延長約50mにわたって破損していることが映像から確認されました。

 また、破損した下水道管の破片による水位の堰上げや地下水の流入も見られました。

神奈川県記者発表資料「流域下水道の下水管接触事故に伴う緊急調査の結果について」より

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 と、ここまでが当事者たちからの公式発表です。

 

 原因は現時点では断定できませんが、設計段階での埋設物調査に不備があったと思われます。

(臨時会見の席で、東京電力パワーグリッド常務執行役員工務部長が、「……ここに神奈川県が管理されている下水道があったということを、われわれとして認知できておりませんで、そのため、シールドを推進していたところ接触してしまった……」と発言しています)

 

 1月に発生した埼玉県八潮市で流域下水道幹線を原因とする陥没事故の記憶が新しいこともあり、驚かれた方も多いかと思います。

 OSINTを謳っている当ブログなので、公開情報から、この事件についてもう少し深掘りしてみたいと思います。

 そのうち、日経コンストラクションが記事にするでしょうけれども…

 

アイキャッチをAIに描かせたけれど、何回指示しても同口径にしてくれないのはなぜ?

 

 まず加害者である、東京電力パワーグリッド発注の管路設置工事について調べてみましょう、と言いたいところですが……セキュリティー上、工事についてわからないことが多いです。

 臨時会見での東電側の発言からわかることは、以下の通りです。

・シールド口径は1800㎜

・施工目的は、相模原市内の旺盛な電力需要に伴う地中送電線の新設

・事故の第一報は29日16時

・破損延長が50mであることから、数週間かけて掘進しながら破損

・工期は、2022年の11月から2026年12月まで

・施工場所は、相模原市以外の市町村が入っているかもしれないが、答えられない

 

 これだけでは東電シールド工事の全貌には迫れませんが、東京電力パワーグリッド公式サイト内の資料を読み込むと、「送変電設備の投資・廃止計画 (66kV分)」に、当該工事と思われる記載がありました。

 「転載禁止」と書いてあるので、元資料はご自身で確認いただきたいのですが…

https://www.tepco.co.jp/pg/consignment/system/pdf/20250526_setubikeikaku-j66.pdf

 

 場所や距離、施工時期などから、「北相模清新線(仮称)」の新設工事がこれに該当すると思われます。

北相模清新線の路線図(一部推測、地理院地図を加工)

 

 次に、被害者の流域下水道についてです。

 特定の場所の下水道について何か調べたいときは、下水道台帳を見てみることをお勧めします。

鳩川横断箇所付近の台帳図抜粋(相模川流域下水道左岸幹線平面縦断図(掲載管番号8)より)

東電と流域下水道幹線の近接具合(地理院地図、左岸幹線台帳図を加工)

 確かに、掘削深さが近ければ、平面図上は接触してしまうような位置関係が、50m程度続いていますね。

 もっとも、この絵はあくまで、東電シールドの占用位置を道路中心とした仮定に基づいて描いたものですが……

 とは言え、実際に接触しているわけですから、ほぼ間違いはないでしょう。

 

 下水道台帳の縦断図や断面図にも、東電シールドを追記してみましょう。

縦断図や断面図にも東電シールドを追記(下水道台帳を加工)

 推測ですが、下水道管内でシールド機が見えるほどの破損状況は、横断図があったNo.570測点より上流側と思われますので、上のように横断図に追記してみました。

 

 

 もう東電は善後策を立案済みでしょうが、早く復旧するといいですね。


(2025年9月16日追記)

 8月19日付のプレスリリースで、今回の事故の原因者である奥村組は、相模原市と締結していた包括連携協定に基づき、すぐ近くの道保川公園内で、「PFOS及びPFOAを含む環境水の浄化に向けた技術実証試験の実施」する旨、発表していました。

 せっかくの地域への貢献に、味噌が付きましたね……

 詳しくは、ブログの別記事を見てね!

amazingkantoplain.hatenablog.com

 

(2025年10月6日追記)

 現場に行ってみました。写真をどうぞ。

 

 北相模清新線の工事は、北相模変電所~上溝のシールド工事と、上溝~清新変電所の推進工事に分割発注されています。

 推進工事(名誉のために記しますが、下水道管に接触した工事ではありません)は、情報公開に比較的積極的です。

横山公園内に設けられた、防音建屋に掲げられた工事案内

 これで、北相模清新線のルートの北側半分がわかりました。

清新変電所前の推進工事終点の立坑

推進工事始点付近の立坑、推進管が見えます

 情報公開に消極的な、シールド工事の事故現場にも行きましたよ。

事故現場付近のシールド立坑と思われる覆工板

東京都下水道局仕様の小型汚水桝蓋を流用しているのは、ポイント高い(?)

地中探査レーダー用の測線(と思われる)

地中探査レーダーによる空洞調査イメージ(AIイラストだよ)

 記者会見で言ってた「モニタリング」とやらの中身は、地中探査レーダーによる空洞調査と観測井による何らかの調査のようですね……

 

(参考)

・神奈川県記者発表資料「流域下水道の下水管接触事故に伴う緊急調査の結果について」

・黒岩知事臨時会見(2025年9月3日)結果概要

奥村組ニュースリリース「神奈川県内における管路設置工事による流域下水道の下水管損傷の調査結果について」

・送電線等の投資・廃止計画(当社における系統情報について|系統情報|東京電力パワーグリッド株式会社)※転載禁止

・流域下水道幹線の下水道台帳(相模川流域下水道左岸幹線 - 神奈川県ホームページ

・神奈川県記者発表資料「流域下水道の下水管接触事故が発生したため緊急調査を実施します」