すごいぞ 関東平野

関東平野の興味深い地形を、webGISを活用したOSINTの手法であぶり出します

ローコストで高速道路を建設? 東北自動車道の低盛土区間とは

またつまらぬものを切ってしまった…

 

 お金はあまり用意できないけれども、家が欲しい!

 そんな人の夢をかなえるローコスト住宅。注文住宅の半分くらいの坪単価で建てられ、夢がぐっと実現に近づきます。

 材料費や人件費、宣伝広告費を抑えるとともに、建築資材の均質化によって工場制作の割合を高め工期を短縮するなどの工夫により、低価格を実現しています。

 

 さて、今回のテーマは高速道路です。

 

 1965年に名神高速道路が、1969年には東名高速道路が全線開通し、東名阪の三大都市が高速道路で結ばれました。

 以降、全国で整備が進められ、国土交通省の道路データブック2023によれば、2023年度末時点での高速自動車国道予定延長11,520㎞のうち供用延長は9,196㎞と、その80%が完成しています。

高速自動車国道とは…東名高速とか東北道など、いわゆる高速道路。首都高のような都市高速、しまなみ海道のような本州四国連絡橋は含まないよ)

 

圏央道アクアライン高速自動車国道ではない(NEXCO東日本「関東・長野エリアの高速道路開通予定区間」より)

 

 しかし、1970年台初頭は、高速道路建設の波が全国に広がるとともに、高速道路網の早期整備が求められました。したがって、建設にあたっては、ローコスト化が求められたのです。

 東北自動車道で最初に開通した岩槻IC - 宇都宮IC(1972年)では、ローコスト化の手法として、低盛土方式が採用されました。

 

 文字通り、盛土を低くする低盛土方式は、盛土材の掘削、購入といった調達費用や、その運搬費を抑えられます。切り崩す山もない関東平野のど真ん中では、盛土材の入手も大変です。

 さらに、買収する用地の幅も減らせます。法面の分を買収しなくて済むからです。

盛土をやめると、買収する用地は減らせる

 しかし低盛土方式は、維持管理上の問題などから本格採用には至りませんでした。

低盛土方式は、アンダーパスの雨水排除問題が生じる


 それでは実際に、岩槻IC付近の低盛土区間を見てみましょう。ICから北へ2.5㎞ほど進んだ場所です。

低盛土方式の区間はココだよ(地理院地図に加筆)

 東北道と国道122号「蓮田岩槻バイパス」は、台地から坂を下り、しばらく綾瀬川の氾濫原を走り、坂を登ってふたたび台地上に戻る線形となっていることがわかると思います。

 縦断面図を作成しましたのでご覧ください。

縦断面図(地理院地図よりcsv出力し加工)

 東北道は、国道に比べて勾配が緩和されていますが、それでも下り坂の直後に上り坂となっていることがわかります。いわゆる「サグ」ですね。

 盛土で氾濫原を通過すれば解消できたはずなのですが、ローコスト化によりサグが生じました。

 サグが生じると、どうなるのでしょうか?

サグは渋滞の原因となる(NEXCO東日本企業情報サイトより)

 上り坂やサグでは、無意識に速度が低下する車がいます。交通量が多い状態では、後続車は車間距離を保とうと次々ブレーキを踏んでしまい、最終的には著しい速度低下や渋滞となります。

 

 それでは、この場所は本当に渋滞ポイントなのでしょうか?

「E4 東北道の渋滞ポイントマップ」(NEXCO東日本ドライバーズサイトより)

 上り線も下り線も、渋滞ポイントですね…。

 

 ローコスト化により、別の社会的なコストを結果的に支払うこととなりました。

 

(参考資料)
「高速道路50年の歩み」 『高速道路五十年史』編集委員会