すごいぞ 関東平野

関東平野の興味深い地形を、webGISを活用したOSINTの手法であぶり出します

現在も活動を続けている地形を行政境に! 櫛引断層

埼玉県深谷市大里郡寄居町の境です(地理院地図にツールで加筆)

 今回は、現在も活動を続ける地形に由来する行政境を取り上げます。

 河川や尾根など、わかりやすい自然地形を行政境とすることはよく見られますが、こういったケースは、珍しいのではないでしょうか。

 場所は、埼玉県大里郡寄居町深谷市との行政境です。最寄り駅は、寄居駅からJR八高線で1駅北上した用土駅です。この付近は1955年に寄居町と合併するまで旧用土村でした。まるで寄居町の飛び地のようですが、鐘撞堂山付近でつながっています。

 早速、地理院地図で見てみましょう。

地形図と陰影起伏図を比較(黒点線:行政境、地理院地図にツールで加筆)

 右の陰影起伏図では、北西から南東に走る比高数メートルの直線状の崖線が見て取れます。この崖線を挟んで、北東側が南西側に対して相対的に高くなっており、土地利用も南西側では水田、北東側では畑が分布しています。

 そして寄居町深谷市の行政境ですが、よく見ると崖線とは一致せず、数十メートルほど北東にズレています。

 この崖線の正体は、いったい何でしょうか?こちらの図をご覧ください。

深谷断層帯綾瀬川断層と櫛挽断層の位置(政府地震調査研究推進本部HPより加筆)

 群馬県高崎市付近から埼玉県川口市付近にわたって、深谷断層帯綾瀬川断層(関東平野北西縁断層帯・元荒川断層帯)と呼ばれる断層帯が存在します。

 北半分にあたる深谷断層帯の副次的な断層である、櫛挽断層が崖線を作ったのです。ということで、活断層図を見てみます。

崖線ではなく、活褶曲のピークに行政境(地理院地図の活断層図にツールで加筆)

 櫛挽断層の活動によって縦ずれ(崖線)が生じたため、南西側の沖積低地と北東側の段丘面に分かれました。

 また段丘面には、活褶曲による微高地が崖線に並行して生じました。微高地は道路にすると、周辺より水はけが良いため、通行や維持管理が容易になります。

 この道路を行政境として設定したと考えることができます。

 結果論ですが、寄居町深谷市の行政境は、現在も続いている変動によって生じた地形に由来するとも言えるのです。